第26話「恐怖のトンカツ屋」



思い出のとんかつ一(はじめ)
 その思い出の店は「とんかつ一(はじめ)」という名前で、伊豆下田の近辺では知らぬものの居ない「ある意味超有名店」なのだ。

 その店は、伊豆急行下田駅前から松崎へ向かう大通りの、駅から200mほどのところにある小じんまりとした店なのだが、オイラがそこに行った時のエピソードを語ろう・・・。

 当時、オイラは付き合っていた彼女と伊豆の弓ヶ浜へ海水浴に出掛けた。その日は太陽がギラギラアスファルトを焦がしているような炎天の昼時だった。

 朝に小田原から出発し、泳ぐ前に腹が減ってしまったオイラ達は、下田の町で腹拵え(はらごしらえ)をしようと思い、前に知り合いから店の場所だけ教えられていたそのトンカツ屋さんに入った。

 その店の中は年季が入った「町の定食屋さんっ!」って感じのオーラを放っていた。オイラ達はカウンターに座り、トンカツ定食とミックスフライ定食を頼んだのだ。

(後日、その店を知る人から聞いた所によると、カウンターの事を「恐怖のカウンター」と呼ぶらしかった)

 店主はトンカツを揚げながら気さくに話しかけてきた。

店「ニーちゃん達、どっから来たの?」
F「小田原なんです〜ぅ」
店「そーなんだ。ところでこの店の話、聞いてる?
F「??、ええ、知り合いから教えられて・・・」

 オイラは店の内容やメニュー構成など、一切聞かされていなかったのだが、知り合いの「是非とも伊豆のご飯はあそこで!」という話でここに来たのだ。それを言わなかった事が、この後の悲劇を生むとは知らず・・・。

 店主はそのオイラの話を聞き、突如「ニカッ!」と笑いながらこう言い放った。

店「ぢゃあ、容赦できねぇな!
F「ほえっ????
店「クックックッ・・・(極悪笑)

 店主はそう言いながら奥に入っていき、そして奥さんが定食盆を運んできた。

とんかつ定食!
どど〜ん!


 キャベツが小山のよーに盛り上がったその定食には、「スパゲティー・味噌汁・ご飯・特大トンカツ」が盛り付けられ、ある種異様なオーラを放っていた。イメージで言えば北斗の拳のケンシロウって感じ?(笑)

ミックスフライ定食!
どど〜ん!


 こっちは彼女がオーダーしたのだが、ケンシロウ以上のオーラを放っていた。あっちがケンシロウなら、まさに山盛りのラオウだ!

 オイラ達二人は絶句した・・・。

 しかし、店主は追い討ちをかけるよーに、こんな言葉を発した。

店「ご飯にカレーかける?
F「えっ・・・?

 まさにそんな展開をダレが予想したであろうか?な、なんとその店ではカレーはサービスで茶碗のご飯の上に盛ってくれているようなのだ!!オイラはその好意を無下に断れず、ご飯の上にたっぷりと盛られてしまったのであった。

 そして途方もない量の定食を、途中まで食べた時に事件は起こった。オイラは平静を装い、TVを見ながら食べていたのだが、テレビの方から自分の定食に目を向けた時に信じられない光景を見たのだ!

ミックスフライが乗っている・・・。

 オイラは隣の彼女を見た!彼女は当然とばかりにオイラの皿に自分の皿から米俵型のヒレカツを移動している所だったのだ!

それはないぜセニョリータ!

 しかし彼女の目が「もう食えない」と潤んでいたのだった。

≪男はどんな時でも自分の皿に盛られたものを平らげねばならない≫

 そんな事を昔聞いた事がある・・・。しかし、今回は何かが違うっ!何かがっ!だがオイラは仕方なく食い始めた。もうTVを観る余裕などないっ!味噌汁を一気に全飲みし、キャベツを貪り食う!

喰う喰う喰う喰う喰う喰う喰うっ!

 オイラその戦いに勝機を見出しどんどん喰っていった。

喰う喰う喰う喰う喰う喰う喰うっ!

 そして一息ついてタバコを吸おうとした時、店主が悪魔のよーに近づいてきた。

店「まだまだだよ!兄ちゃん!

 そう店主は言い放つと、オイラの皿に手で掴めるギリギリの山盛りキャベツをのせ、トングバサミでスパゲティーの御代わりをのせた!!!

ぎえええええええ!

 そう、この店のカウンター席は、強制的に御代わりをさせられてしまう席だったのだ!!

店「おっと忘れてた!

?!?!?!げえっ!
味噌汁とご飯のお代わりがぁ〜!


 そう、こちらも強制的に盛られてしまったのだ(号泣)

 オイラの前に見えかけていたゴールが、マッハ5ぐらいのスピードで逃げていくのを感じた・・・

 そしてオイラは心の中で半ベソをかきながらそれを食べたのであった・・・。もちろんカレーは辞退した・・・

 タタカイ ハ オワッタ・・・。

 完食したオイラはそう思い、席を立ったとき店主が言った。

店「裏が川の土手だから、そこの木陰で休んでいくといいよ」
F「ごっそさん・・・はぁ・・・(溜息)」

 オイラ達は礼を言い店を後にした。
 しかし話はまだ終わらない。

 店を出たオイラ達は裏の土手まで歩いた。距離にして約20メートル。

 二人とも、たったそれだけ歩いただけで横っ腹が痛くなった・・・。喰い過ぎで水飲んで全力疾走したみたいな状態になるとは思わなかったゼ・・・。

とんかつ一恐るべしっ!

皆も伊豆の下田に旅行の際には、一回食べに行ってみてくれ。


次のオハナシへGO!


(最終更新2004/09/15/Wed/19:20:43)






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