占い師の怪談(8)「憑依」



憑依
 今回はいつもの日記の口調で書いてみようと思う。正直、この軽い文体でしか書けないぐらい怖かったのだ。たまにくだらないオヤヂギャグが入って気を削ぐが、まあ我慢してくれ。



 その日、オイラは友人とドライブに出掛けたんだわ。時間は夕暮れ、もうそろそろ陽が落ちようかという頃だった。

 向かった先は箱根、夜景を見て、ドライブをして、まあ、楽しい時間だったんだよね。んでさ、帰る事になって御殿場へ下る道にさしかかったんだ。

 「〜〜〜〜じゃん?あはははは」
 「そうそう!」
 「んでさ、〜〜が〜〜なワケよ」
 「ぎゃははははは!」
 「でねでね、〜〜が・・・・・・・・・・・・・・」

 「・・・・・・・・・・・・・・」
 「ん?どうした?」
 「・・・・・・・・・・・・・・」

 それまで快活に話していたソイツが、急に無口になったんだ。

 「なんかあったか?」
 「・・・・・・・・」

 一瞬、何かの話題で急に怒ったとか、車酔いしたかとか思ったオイラは、道の脇に車を停め、彼の方を向いたんだよね。

 よく見ると、ソイツはさっきの話していた体勢のまま、白眼剥いて固まっているんだ。でも表情は非対称になって、口の端から大量の・・・






















 ゲロじゃないぞ。(笑)車酔いじゃねえって。ヨダレだ。

 変な表情になったままダラダラ流してるワケよ。結構、そういう病気の人だったりすると、話していてすぐ分かるし、オカルト的なものだったりすると、もっと嫌な感じが前兆みたいにいつもするんだわ。

 でもね、この時は全然分からなくて、脈も1分間に80ぐらいでそんな興奮しているわけでもないし、てんかんとかを疑ったんさ。とりあえずハンカチで服とクチを拭いてやり、それが収まるまで待ったんだ。

 でさ、段々と白眼剥いてたのが戻ってくるに従い、ある事を低い皺嗄れ声で口走ったんだ。

「寒い・・・」

 その日は夏で熱帯夜の無風、相手は汗もかいておらず熱もない状態・・・間違いでも「寒い」なんて発言はしないだろうと思われる状態だ。

 オイラはどーしたのかと思い、聞いてみたんだよね。

 「大丈夫か?」
 「・・・・・」
 「イヒヒヒヒヒヒヒヒ・・・・
 「ん?」
 「イヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!

 そう、ソイツは白眼で気味悪く笑っていたのだ。

ゾク〜〜〜!

 とたんに寒気に襲われたオイラだが、病気かも知れないと思う事にして、もう少し待つ事にしたさ。

 しっかし場所は暗い夜道、モチロンその場所での怪談話も知っている。ある意味この状況は想像を絶する恐怖なワケだ。正直、オイラはビビっていた。

 余談だが、オイラは若い頃、結構オカルトかぶれした時期があってさ、そういう状況でマズイ状態にならないよーなやり方を何種類か知ってるんさ。でね、そのままでいるのも怖いし、とりあえず試すしかないって感じでやってみたさ。

 まずは一応、相手が仏教徒かも知れないと思い、オイラは仏教徒ではないが暗記していたんで般若経を唱えてみた。(笑)



























き、効かねえっ!

 状況は変わらない。ヤバイと思いながらも、西洋系マル秘な方法を連続で詠唱してみる。




































やっぱし、効かねえっ!

いかん、このままではイカンよ君!キャシー中島小坪トンネル事件みたいな状態になってしまう!!


 そう思ったオイラはその他の手段としてとっておいた方法を試してみた。

 *****して、*を練り、**に溜め、手を眼前で手前に引っ張り、クロスする事を繰り返して最後に****るってやつだ。(中国系ね)正直、若い頃に伝え聞き、わずかに練習しただけだったので、効くかどうか分からなかった。しかし、やる以外にない。まさに 絶体絶命ピ〜ンチだ!


 不幸中の幸いは、気味悪く笑う以外、首を絞めてきたりするわけではなく何もしてこなかったので、これが出来たんだけれど、何かしてきたら憑き物落としの場所に当身で気絶させて病院に連れて行く手が残っているだけだった。

 何回かその方法を必死で試すうちに、感触が生まれ、何かが引っ張られてくるように感じたんでそのままブッコ抜き、そのままの勢いでぶん投げたさ。それは開いていた窓から外に飛び、地面に落ちた。

べちゃっ・・・・

 肉眼では何も見えないが、脳裏では何かがアスファルトでのたくっている気配がする。

びちゃ・・・ぬちゃっ・・・

 そのままそこにいるのはマズイと思ったオイラは、速攻でシフトレバーをローにぶち込み、鬼のよーな速さでその場を離れたよ。そこから御殿場市街地のコンビ二までの間は当然信号無視だ。(笑)隣の友人は目を閉じてぐったりしていた。

 コンビ二の駐車場で肩を揺さぶる。眼を開けた。

 「あれっ?」

 友人は素っ頓狂な声をあげ、怪訝な顔で眼を覚ました。

 「すまーん。寝ちゃったか〜、悪りぃ悪りぃ(笑)」
 「お前、覚えてないか?」
 「へ?何を?」

 どうやら全然覚えていないようだ。そのまま正直に言うかどうか一瞬悩んだが、知らないほうがいいと思い、誤魔化す事にしたよ。

 「さっきお前、寝言叫んでたぜ(笑)」
 「ま、マジ?」
 「おう、女の名前叫んでたぞ。」
 「何ていってた?」
 「○○ちゃーん!だってさ(爆笑)」

※「○○ちゃーん!」は当時TVで話題の不細工タレントにしておいたのはデフォルトだ(笑)

 とりあえずオイラはその場をギャグで誤魔化し、周囲に注意しながら車を降りて店であったかい缶コーヒーを買ったよ。それを飲んでもしばらく動けなかったさ。

 んでね、それから数分後に気持ちが落ち着いたところで車を発進させ、東名御殿場インターから高速に乗ったさ。彼は俺がちび丸子ちゃんに出てきた藤木君のよーな青い顔をしているのには気付いていないようだ。

 車は快調に大井松田インターに向け、夜の高速をひた走る。でも心なしか速度は速くなっていた。

 しばらくは何ともなかった・・・。

 しかし、それはそれから起こる物事の序章でしかなかったのだよ・・・。

 ふと気が付くと、いつの間にか彼はまた眼を閉じ、眠りの世界へ入っていた。さっきの事もあるし、疲れたかも知れないと思って寝かせておく事にしたさ。その後も問題なく車は走り、鮎沢パーキングエリアを越え、車が山北バス停に近づいた頃、それは起こった。そうそう、何年前だったかバスが大事故を起こして谷底に落ちた現場といえば分かる人はいるだろう。

彼が急に眼を開け、横からハンドルに手を掛けてきたのだ!!あの笑い方をしながら!!

イヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!

やべえっ!!!

そう、あれで終わったワケではなかったのだ。一旦落ちたフリをして、この機会を窺がっていたのだ。

 オイラは物凄い力でハンドルを固定し、ソイツが発揮する力に対抗した。車はまるで居眠り運転か酔払い運転のように蛇行する。

このままじゃ事故る!正直やべえっ!この速度で事故ったら・・・

 そう、速度は150Km/H、この速度でフェンスに激突すれば、あのバス事故のように40m下の谷底に落下するか、壁に激突して炎上したり、潰れてぐちゃぐちゃになって死ぬ運命だ。しかし、天運はオイラの方にあった。僅かに腕力はオイラのほうが勝り、バス停を超えた先の直線の道路脇に、間一髪で停車する事が出来た。ソイツはまだ停まった車のハンドルを壁のほうに回しながら気味の悪い笑いを続けている。

イヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!

 さすがに今回はマジギレしたよ。

どりゃー!

























 気合いを入れての二発・・・(笑)

 すまん友よ。アゴを殴った上に鳩尾に正拳突き入れてしまって・・・(笑)だって怖かったんだモン(笑)

 そういえば当時のゲームセンターの機械で、その威力を測った時の右正拳突きの数値は・・・





















衝撃力187kg(笑)

 いやーその当時は鍛えてたからさ〜。でも骨折させなくてよかった(爆笑)まあ、鼻血出て、リバースしてたけど、それで普通に戻ったからいいじゃん?ほら、車内だったから不安定な体勢で威力はそがれてたしー。青痣になってたけど・・・。

 彼は正気に戻ったんだけれど、ワケが分からず全力でオイラに殴られたと勘違いし、理由を言いながら何度も謝ったんだが、それ以来二度とオイラとは遊んでくれなかったのであった・・・。

 あれから会っていないが、その後、彼はどうなったんだろうか・・・。


(最終更新2004/08/02/Mon/12:17:53)






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